ストロベリーキャンドル



帰り際、花屋に寄ると、
素敵な花に目を奪われた。


花屋の店員さんがストロベリーキャンドルという花だと教えてくれた。


その花言葉を聞いて、ピンときた。
その花を購入し、自宅へと急いだ。





マンションに帰り鍵を開けようとカバンを漁っていると、
何か大きな物音が中から聞こえた。


びっくりして扉を見つめる。
何?なんだろう。


慌てて鍵を開けて中に入ると、仁の叫び声が聞こえた。


仁の自室から?
鍵はかかっていない。
私は恐る恐る中を覗いた。
そこには、棚のものを全てなぎ倒した仁が立っていた。


「仁!どうしたの?どこか痛いの?」


「うわぁぁああああ!」


「仁。落ち着いて!どうしたの?何があったの?」


叫ぶだけの仁は暴れて、周りのものを傷付けていく。
そんな仁にしがみついて、仁を止めようとした。


「何でだよ!何で何も分からないんだよ!
 なんで俺なんだよ!なんで!」


「仁……落ち着こう?大丈夫。すぐに元に戻るから、
 だから落ち着いて」


「もう嫌だ!こんなの、あんまりだ!
 俺が何をしたって言うんだよ!」


壁を殴り続ける仁を止めることが出来ない。


本当にそのとおりよ、神様。
どうして仁だったの?
仁が何をしたっていうの?


仁は真面目に、優しく生きていただけなのに。


どうして仁にこんな困難を突きつけるのよ。










「死にたい」











「えっ?」


ポツリと、仁が呟いた。
仁の顔を見つめると、仁の目には力がなかった。
涙を流して、ただ茫然と立ち尽くしている。

今、何て言ったの?



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