ストロベリーキャンドル
私を思い出して





パサっと、何かが肩にかかる感触で目が覚めた。


顔を上げると、食卓で寝てしまったのか、
気付いたら夜中になっていた。


見ると、肩に毛布が掛けられている。
振り返ると、仁が立っていた。


「仁……」


仁は何も言わずに私の隣に座ると、
ポツリと口を開いた。


「風邪ひくと思ったから」


それだけ短く言う。
私はその毛布をきゅっと握りしめた。







「なあ、奏音」









「…………えっ?」


聞き間違いかと思った。


私の幻聴?
そう呼んでほしいと思っていたのが、
幻聴となって表れたの?


そう思うほどだった。


瞬間、時間が止まったように何も聞こえなくなる。


今、私のことを……。


「仁?」












「明日、またオムライス、食べに行こうか」












涙が、じわりと滲んだ。


仁を見つめる。
仁は申し訳なさそうに笑っていた。


記憶が戻ったの?本当に?
私を、また、奏音って、呼んでくれたの?


「うん、うん……行きたい。また、食べに行こう!」


私が言うと、それまでうつろだった仁の瞳に力が戻り、
にっこりと笑った。


その笑顔が前の仁と何にも変わらなくて安心する。


仁だ。
いつもの仁だ。


仁が、帰って来た。


「じゃあ、寝ようか」


「う、うん」


仁は立ち上がって私の手を引いた。
ずっと私が1人で使っていた寝室へと向かう。


仁は私を寝かせると、横に自分も入った。
そして電気を消して、私のほうを向く。


手を、握ってくれると、仁は口を開いた。


「お休み。奏音」


「お休み」


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