ストロベリーキャンドル



美奈さんはすぐに着替えて一緒に探してくれた。


近くの公園、コンビニ、
24時間営業しているファミレス、
考えられるところを全て探した。


それでも、仁は見つからなかった。


美奈さんに連れられて警察に行き、届けを出して、
私は病院に向かった。


こんな朝早くにいるはずもなく、
病院の入り口の前で呆けてしまった。


すると携帯に電話がかかって来た。
知らない番号からだった。


「も、もしもし……」


「神崎さんの携帯でお間違いないですか?」


男の人の声だった。
どこか聞き覚えのあるような、そんな声。


「私、七北田総合病院の金津です」


「あっ、お世話様です。あの、先生、仁が、
 主人がいなくなってしまって……」


電話は金津先生からだった。
先生は電話の向こうですうっと息を吸うと、
落ち着いた声で話し始めた。


「私のところに、今朝、電話がありました。
 ご主人からです」


「しゅ、主人はなんて……?」


「俺は行きます。お世話になりました、と」


ドクン、と胸が鳴る。
やっぱり、仁はどこかにいなくなってしまったの?


「まさかと思い、奥様にお電話しました。
 まさか、いなくなってしまうとは」


「せ、先生。どこに行くとか、
 何も言っていませんでしたか!」


「何も。お役に立てず申し訳ありません」


電話を切って、しばらくそのまま立ち尽くす。
やけに頭が冴えている感覚だった。


「仁……」



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