ストロベリーキャンドル
「仁、戻ってきてよ……仁!」
わぁっと、大泣きした。
こんなことなら、あの夜眠らなければよかった。
ずっと仁に寄り添って、仁が安心して眠るまで起きていればよかった。
どうして寝てしまったんだろう。
どうして仁を1人にしたんだろう。
仁は1人で、苦しかったのかもしれないのに。
私はなんて大バカ者なんだろう。
仁を手放してしまった。
仁はもう、ここにはいない。
どこか知らないところへ行ってしまったの?
もう、会えないの?
私は仁のあの笑った顔を見ることが出来ないの?
「奏音」って、もう呼んではもらえないの?
『ねぇ、一ノ瀬さん。一緒に探してくれない?』
あの時のことを思い出した。
私と、仁が初めて言葉を交わした日のことを。
そうしたら、今までのことが記憶を辿って思い出されていった。
『俺と付き合えばいい』
『君のこと、俺でいっぱいにしてあげるよ』
『一ノ瀬さん』
『君が好きだ、奏音』
『奏音』
『その秘密によって君の何かが失われても、
俺は奏音のそばにいるよ』
『結婚しよう』
『奏音』
『奏音』
『ねぇ、奏音』
『明日、またオムライス、食べに行こうか』