新妻はエリート外科医に愛されまくり
「私も嬉しい。来てくれてありがとう」

「お疲れ様。森居(もりい)さん。遠いところを、ようこそ」

「あ」


私の少し後ろに立った颯斗に声をかけられ、イケメン好きを憚らない彼女は、より一層目を輝かせた。


「各務せんせ~いっ! うわあ、本物っ……」

「こらこら、美奈ちゃん。仁科さんへと同じ勢いで、抱きつくんじゃないぞ」


ちょうど追いついた木山先生に首根っこを掴まれ、うぐっと呻く。


「だ、抱きついたりしませんよっ。各務先生は、葉月さんの旦那様なんだしっ」


体勢を立て直して、ほんのちょっと頬を膨らませる。
二人のやり取りを見て、颯斗も小さくプッと吹き出した。


「木山先生も、シンポジウム、お疲れ様です」


声をかけられた木山先生が、彼に顔を向けた。


「いいえ。お元気そうで、なにより」


どこか好戦的な笑みを浮かべて、颯斗とがっちりと握手を交わす。


正直を言うと、日本での木山先生の印象は、私も颯斗もそれほどよくはない。
なにせ、年下の颯斗が先に准教授になったのを妬んで、彼を目の仇にしていた人だ。
なんとなく、接し方に戸惑うところもあるのだけど……。
火の元冷めれば、ってことだろうか。
意外と、和やかだった。
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