新妻はエリート外科医に愛されまくり
今後の円滑な治療のためにも、学校の授業も頑張らなきゃいけない。
いつも以上に気合を入れて登校した。
ところが――。


「葉月さん、いい眠りっぷりですねえ」


呆れた声と同時に肩を揺さぶられ、私はハッとして目を覚ました。


「……!?」


なんだか、目蓋が重い。
一瞬、ここがどこで自分がどんな状態にあったかわからず、私は慌てて辺りを見回した。


私の肩を揺さぶっていたのは、学君だった。
ここは、学校の教室。
ホワイトボードはすでに綺麗に消されていて、教壇に講師の姿もない。


「えっ……あれ」

「気持ちよさそうな寝息立てて、完全に寝入ってましたよー。最近葉月さん、鬼気迫る勢いで、真剣に授業受けてたのに。寝不足ですか~?」


私は、呆然としながら彼を見上げた。
学君は私を見下ろし、一度ぶっと吹き出してから、自分の額を指差した。


「赤く痕残っちゃってますよ。どんだけ爆睡してたんですか」


からかい混じりの指摘に、条件反射で額に手を当てる。


「ね、寝ちゃった……?」


確かに、授業が始まる前から、頭がボーッとするのは自覚していた。
授業開始と同時にうつらうつらと船を漕ぎ、猛烈な睡魔に抗えないまま、眠ってしまったようだ。


「嘘……。ノート……」


顔の下に開いたままのノートにも、ミミズが這うような、解読不能な文字が残っているだけ。
がっくりとこうべを垂れた私を、学君がクスクス笑った。
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