新妻はエリート外科医に愛されまくり
翌日、少し早めに仕事が終わったと、颯斗から電話があった。


『これから、大学病院に来れるか? 寒いから、あったかくしておいで』


そう言われて、私は夕日が西の空に沈むのと同時に、家を出た。
バスを乗り継いで、颯斗の病院に到着した時、左手首に嵌めた腕時計は、午後六時を指していた。


「葉月! こっち」


指定された心臓外科病棟の前に、着替えを終えた颯斗が立っていた。
こちらに向かって、大きく手を振ってくれる。
その隣に、同じく私服のレイさんとメグさんもいた。


「お疲れ様です。えっと……」


突然呼ばれた用件を、なにも聞いていない。
三人の前に小走りで駆け寄ると、颯斗が私の手を握って引っ張った。


「おいで」

「え?」

「いいから」


なんだか弾んだ声。
私は首を傾げながら、引かれるままに歩を進める。
後からにこやかについてくるレイさんたちに、答えを求めて振り返ったけど、二人ともなにも言わなかった。


颯斗が向かったのは、この大学病院の真ん中にある外来棟だった。
正面玄関前の広場を目にした途端。


「わあ……」


私は大きく目を見開き、感嘆の声をあげていた。
< 132 / 188 >

この作品をシェア

pagetop