新妻はエリート外科医に愛されまくり
その表情が、どこか険しくも見えたから、私は恐る恐る身を乗り出した。


「あの。なにか、おかしなところでも……?」


シャーカステンのフィルムを見ても、私にはなにがなんだかわからない。
私の視線を追うように、ドクターもそこに目を向けた。


「子宮や卵巣にも、これと言った所見はないんですが、一度詳しい検査をされることをお勧めします。……もしかしたら各務さん、妊娠しにくい可能性が」

「……え?」


心臓が、ドクッと嫌な音を立てて沸いた。
大きく目を丸くして、その先を求めてドクターを見つめる。


「新婚さんということですし。お子さん、お望みですよね?」

「は、はい……」


困惑しながら、頷いて返す。
ドクターも、理解を示すように首を縦に振った。


「今のところ、可能性としか言いようがありません。ですが、どちらにしても、精密検査は早いに越したことはありませんよ」


滔々と説くように告げる声が、何故か遠くなっていく。


『俺たちの最初の子は、男の子がいいな』


渡米後初めて帰国した時、颯斗は私の両親に挨拶してくれた。
帰りの飛行機で、彼が言った言葉が、胸に蘇ってくる。
つい昨日、結婚式の前に、颯斗のご両親にも、『早く孫の顔が見たい』と言われた。


『私は颯斗を二十八で産んだのよ。葉月さんは、すでに三十なんだし。早く……ね?』
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