新妻はエリート外科医に愛されまくり
病院を出た時、東京の空は夕焼けに染まっていた。
左手首の腕時計に目を落とすと、午後五時半を指している。
人間ドッグを受けるために、朝からなにも食べていない。
胃は空っぽのはずなのに、全然空腹を感じない。
それどころか、胸焼けすら覚えた。


無意識に胃を摩りながら、川沿いの通りを駅に向かってとぼとぼ歩く。
ふと顔を上げると、遠くに東都大学医学部附属病院のヘリポートが見えた。
なんとなく眺めながら足を止め、橋の欄干にもたれかかる。
少し身を乗り出して眼下の川の水面を見つめ、「はーっ」と大きな溜め息をついた。


今日の診断結果は、二週間ほどでフィラデルフィアの自宅に送ってくれるそうだ。
当たり前だけど、今日の今日で確定診断が出るわけがない。
だけど――。


『各務さんの生理痛の原因としては、子宮内膜症の可能性があります。こちらは生化学検査の結果ですが、三十歳で生理周期が不規則という点からも、プロラクチンがやや高いのが気になります」


パソコン画面で、生化学検査の結果を見せてもらった。
異常を示すアスタリスクがついていたけど、私はそれをどう読めばいいのかわからなかった。


質問を挟んでみると、プロラクチンは、別名乳汁分泌ホルモン。
ブライダルチェックでは、必須の検査項目。
この数値が高いと、妊娠しづらいという診断に繋がるという。
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