新妻はエリート外科医に愛されまくり
まだ、幸せの第一歩を一緒に踏み出したばかりなのに、私が、不妊症を疑われてるなんて。
もしかしたら、私と颯斗は、この先、子供に恵まれないかもしれない――。


「そんなこと、なんて言えばいいのよ……」


なんとなくだけど、子供が好きなのは感じられる。
それなのに、自分の子供を望めないなんて、絶対悲しませるに決まってる。
大好きな颯斗の笑顔が凍りつき、がっかりと歪むのを想像したら、とても言えない。


胸が詰まり、苦しくなって、私は無意識に胸元を握りしめた。
重い漬物石が乗っかってるような気分で、ゆっくり頭を上げた。
一度自分を鼓舞しようとして、両手でパンと頬を叩く。


『妊娠しにくい』と言われただけで、まだ不妊症と決まったわけじゃない。
もしそうだとしても、治療すればなんとかなるかもしれないんだし、今から悲観することじゃない。
そう、不確定な診断に思い悩んで浮かない顔を、颯斗に見せるわけにはいかない……。


私は欄干から離れ、行き交う人たちの波に紛れた。
ふっと顔を上げると、大きな書店のビルが視界に入ってきた。
ホテルに戻る前に、寄って行こう。
アメリカじゃ、日本語で書かれた不妊治療の本はなかなか手に入らない。
心配しすぎるのはダメだけど、保険のつもりで買って帰ろう。


絶対に颯斗に見つからないように。
しっかり隠して、持って帰らないと。
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