新妻はエリート外科医に愛されまくり
颯斗はほんのり頬を染めて、「まったく」と独り言ちた。
ちょっと乱暴に、ガシガシと頭を掻く。


今日の彼は、白いタキシード姿。
それに合わせて、いつもは額に下ろしているサラサラの前髪を、後ろに流している。
少しセットが崩れて、形のいい額に一房落ちた。
私は、そんな彼にもクスッと笑った。


遠くに見える青い海に浮かぶ船の汽笛が、チャペルの尖塔の鐘の音に混じって、鼓膜をくすぐる。
潮の香りを運んでくる柔らかいそよ風に、頭に着けたヴェールがふわりと舞う。
無意識に頭に手を遣った時、視界の端に、よく知る顔ぶれが揃っているのが映り込んだ。


「あ、颯斗」


私は、彼の腕にかけた手にキュッと力を込めた。
それに気付いた颯斗が、私の促す方向に顔を向ける。
『あ』という形に、口を開いた。


私は、それを横目に、彼から手を離す。
そちらに向けて、やや小走りで歩を進めた。
そして、左手のウェディングブーケを、一度両手で持ち直す。


花嫁の、ブーケトス。
本当は、後ろ向きになって、誰に届くかわからない状態で投げるのが正解なんだけど……。


「わわっ……」


私が投げたブーケをキャッチした女性が、驚きで目をまん丸にして声を上げた。
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