新妻はエリート外科医に愛されまくり
「先生に当てられて、とんちんかんな返事したことなんか、気にしなくても。俺たち、初級クラスなんだし。今のうちに目いっぱい掻いときましょうよ、赤っ恥」


人の気も知らずに、随分と軽い調子で笑い飛ばしてくれる。
いつもなら、羞恥のあまり憤慨するところだけど……。


「そのくらいじゃ死なないよ」


苦笑で返して、先を急ぐ。
「えー」と、学君が後からついて来た。


「じゃあ、日本でなにかあったんですか?」


隣に並んだ彼にツッコまれ、私は返事に窮した。
学君は、答えを待って瞬きをしている。


「……なんにもない」


私はふいっと顔を背け、意識して歩を速めた。


「ちょっ……葉月さん」


それでも、彼は私を追ってくる。


「先週日本に帰国してたのって、結婚式挙げるためでしょ?」


そう言いながら、いきなり私の左手首を掴んだ。


「きゃっ……!」

「旦那さん、医者でしたっけ。これ、マリッジリングでしょ。さっすが~。シンプルだけど、いかにも高級そうで、神々しいったら。授業中、光が反射してましたよ」

「ちょっ……やめて」


私は慌てて手を引っ込めた。
学君は悪びれずに、「へへへ」と笑っている。
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