新妻はエリート外科医に愛されまくり
「新婚ホヤホヤってヤツでしょ? 相当浮かれてんだろうな~と思ってたのに。逆に暗いから、心配なんですよ」


そう言われて、思わずグッと詰まった。


「暗いなんて。私、もともと、そういうので浮かれる性格じゃないんだって」


ぎこちなく笑って誤魔化し、校舎から外の通りに出た。
学校は、フィラデルフィアの中心部にある。
平日、オフィスアワー真っ只中で、広い歩道にはビジネスマンも多く行き交っている。


十月。
フィラデルフィアの街にも、秋が訪れている。
夏は東京並みに暑い日もあり、今もそれほど寒くはない。
でも、あとひと月もしたら寒さの厳しい冬が訪れる。
曇天で雨も多く、折り畳み傘は手放せない。
だけど、今日は、雨の心配はなさそうだ。


学君は、デニムのポケットからスマホを取り出し、時間を確認している。


「ねえ、葉月さん。まだ時間あるでしょ? カフェにでも行かない?」


駅に向かって踏み出す私の肩を、ポンと叩いた。


「え? ああ……ごめん」


私も左手首の腕時計に目を落とし、ひょいと肩を竦めた。


「今夜、旦那さんの同僚夫婦が遊びに来てくれるの。早く帰って、夕食の支度しないといけないから」


学君は「えー」と、ちょっと残念そうな顔をした。


「じゃあ、また来週ね」


不満げに口をへの字に曲げる彼に手を振って、私は足早に雑踏に紛れていった。
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