新妻はエリート外科医に愛されまくり
「え? 孫……?」


彼が呟くのを聞いて、条件反射で振り返った。
颯斗は私に背を向けて、ガシガシと頭を掻いている。


「いや、そう言われても。そればっかりは、授かりものだし……」


返答を濁しながら、私を肩越しに見遣ってくる。
私は聞こえていないふりをして、目が合うのを避けて顔を背けた。


「……はいはい。わかったよ。じゃあ、また」


颯斗はやや持て余し気味に、電話を終えた。
そして、「ふうっ」と息を吐く。
私はその場に立ち尽くしたまま、ただ身を強張らせていた。


一瞬、広いリビングに、ぎこちない沈黙が過ぎった。
なにか言わなきゃと、話題を探していると。


「……葉月」


彼に先を越されて、ギクリと肩を震わせた。


「は、はい……?」


なにを言われるか警戒して、恐る恐る返事をする。
だけど颯斗は、ニコッと笑った。


「母さんが、米送ってくれるってさ。今年の新米」

「米……? あ、ああ!」


話題が完全に想定外で、一瞬なにを言われたのかわからなかった。
一拍遅れてポンと手を打って反応すると、颯斗もフッと目を細める。


「うちの母さんの親戚筋のだから、味は間違いない。絶対美味いよ」
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