新妻はエリート外科医に愛されまくり
「えっ……?」


突然の話題転換。
まだからかわれるのかと、無意識に警戒する私に、彼女はわずかに身を屈め、コソッと訊ねてくる。


「子供。どうするの?」


颯斗の前じゃなくても、そのワードには神経が過敏になっている。
私はギクッとして、瞬きを返した。


「い、いえ。まだ今は……」

「あんな事件に遭った後だもの。アメリカで育てるの、怖いって思わない?」

「っ、え?」


私の予想とは違い、結構真剣な問いかけのようだ。
私は警戒心を少し緩めて、彼女を見つめた。


「怖い、って……?」


恐る恐る聞き返すと、遠山さんはぎこちなく首を傾けた。


「事件のニュース見てね。旦那と話し合ったんだ。二人目は諦めようか……って」

「諦める……?」


彼女が言う『夫婦の決断』に困惑して、言葉尻を拾って聞き返す。
私の隣で、学君もピクリと眉を動かした。


「うちの子、四つ。幼稚園生。でも、幼稚園だって安全ではないじゃない」

「……はい」


私は、同意して頷いてみせた。
アメリカでの銃撃事件のニュースは、日本にいる時も幾度となく耳にした。
狙われるのは、人が集まるところ。
真昼間、授業中の学校で起きた銃撃事件も多い。
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