また、君の夢を見ていた
第一章
再会
それは、今日の朝のことだった。
いつものようにベットから起き上がって、顔を洗おうと洗面台の前に立ったとき。
何故かいつもと違う寒気がして、風邪かなと思いながらも蛇口をひねった。バシャバシャと顔を洗い、息を深く吐いて鏡を見た瞬間、思わず息と動きを止めてしまった。
ここにいるはずのない湊が、私の後ろに立っていたから。
『……ついに幻覚か、疲れてるのかな』
呆れるかもしれないけれど、まず思ったのはそれだった。
最近はバイトを詰めすぎていたし、深夜まで起きていることも多く生活習慣が乱れまくっていた私は、そう結論づけた。
目の下にできてしまったクマを見るフリをして、後ろの様子をうかがってみる。
彼はぼーっとうわの空で何かを考えているようだ。
私はそっとタオルを手に取り水を拭き取ると、振り返った。
その時ほんの一瞬だけ目が合って、彼はビクリと体を震わせる。
私は一応気にしないふうを装ってその横をすり抜け、部屋のテレビをつけながら座椅子に腰を下ろした。
『2月10日、今日の天気はーー……』
いつもの天気予報を見ながら、今日もバイトあったかな、課題は少ないし学校でやればいいか、それしてもやけにリアルな幻覚だな、まぁ普通に過ごしてれば消えるよねなどと適当なことを考えていると、音もなく湊が近づいてきて、少し間を空けて私の隣にあぐらをかいて座った。
「久しぶり」
最初誰がその言葉を発したのか、私にはわからなかった。けれども次の言葉で、それはニュースの声でも、風の音でも、気のせいでもないことを知る。
「俺、死んじゃったみたいでさ」