夢の中の世界
恵里果は吉之の前に立ち、みんなの視線から吉之を守っているように見えた。


その瞬間、恵里果の気持ちが見えてしまった。


恵里果自身も、きっと普段は誰にも気が付かれないようにしていただろう、その気持ち。


それは、この空間にいることでどんどん露呈してきてしまっていた。


「恵里果は吉之のことが好きだから庇うんだよね?」


あたしはすかさず言った。


自分が言われたことをそのまま言い返しただけだ。


「はぁ? 関係ないし」


恵里果があたしを睨み付けてくるが、それは肯定しているのと同じだった。


「関係ないなんて嘘。さっきから吉之のことばかり気にかけてる」


「だから何? 珠だって同じじゃん!」


恵里果が声を荒げてそう言った。


確かにそうかもしれない。


だけどさっきも感じたように、この空間でのえこひいきは危険だ。


「恵里果、もう少し冷静になって考えようよ。好きとか嫌いとか、そんな感情で判断してたら、この教室から出られないままだよ」


「珠に偉そうなこと言われたくないけど」
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