夢の中の世界
真弥がそう呟いた瞬間、カチッ!と音がして時計の針が動いていた。


35分だ。


その結果に、全員の視線が吉之へ向かう。


これにはさすがに吉之もたじろいだようで、後ずさりをした。


一瞬にして青い顔になり、ブンブンと子どもみたいに左右に首をふる。


「俺はなにもしてない!!」


震える声で叫んでも、誰も吉之の言葉を信用していなかった。


「そ、そうだよ! だいたい、カラーボールを受け取ったのはオジサンだったんでしょう!?」


恵里果の懸命叫び声により、あたしは貴央の言っていたことを思い出していた。


カラーボールを受け取ったのは50代の男性だったと言っていたはずだ。


「確かにオッサンだった……」


貴央が何度も頷く。


「ほらみろ! 俺じゃない!」


吉之は全員へ向けて目をむいて叫ぶ。


カラーボールを受け取ったのが吉之じゃないとすれば、動悸の部分が揺らいでくる。


だけど、時計の針は確かに進んだのだ。
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