夢の中の世界
「もういいから。俺がカラーボールを渡したあのオッサンは誰だったんだ? 吉之の知ってるオッサンだったんだろ?」


貴央が冷めた視線を吉之へ向けて言った。


「知らない……! オッサンって誰のことだよ!」


そう答えながら、吉之はその場に膝をついてしまった。


自分がなにを言っても誰も信じてくれない。


この状況に、立っていることすら困難になったのだ。


「もうやめてよ! 吉之1人をここまでイジメるなんてひどいよ!」


恵里果が吉之の隣に座り込み、あたしたちを睨み上げた。


「これがイジメに見えるのか? これは大切なことなんだぞ」


恵一が言い返しても、今の恵里果には届かない。


恵里果からすれば、全員が吉之を追い詰めているようにしか見えないのだろう。


「吉之はなにも知らないって言ってるじゃん! なのに、どうして信じてあげないの!?」


叫ぶ目から涙が伝って頬を流れて行く。


恵里果の涙に一瞬胸がチクリと痛んだ。


親友の涙はさすがに胸に刺さるものがある。
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