夢の中の世界
「1年生2人は、なにか心当たりがないの?」


あたしがそう訊ねると一輝と由祐は眉間にシワを寄せて考え込んでしまった。


「俺たちと先輩たちとの接点は、やっぱりキックボクシングです。でも、それがどう関係しているのか……」


一輝はそこまで言って黙り込んでしまった。


なにかなかったか必死で考えているけれど、思い当たる事がないみたいだ。


それでもなにかあるはずだ。


事故に関係するななにかが。


恵一は無言でジッと2人の1年生を見つめていた。


その目は試合のときと同様に、決してあきらめないと言う強い決意を感じさせた。


「なにも関係ないとは思うんですけど……」


ゆっくりとそう言ったのは由祐の方だった。


一輝が由祐へ視線を向けて、少し驚いたように目を開いた。


「ほら、俺たち更衣室で色々話をするだろ?」


由祐にそう言われ一輝は頷く。


「あ、そういえば気になることがあったっけ」


由祐の一言で、一輝も何か思い出したようだ。
< 113 / 145 >

この作品をシェア

pagetop