夢の中の世界
あたしと恵一は知らず知らず身を乗り出して、2人の次の言葉を待った。


「俺たちの話題は専らキックボクシングで、恵一先輩と吉之先輩についての話はよくしてました」


由祐がそう言うと、一輝が頷いて次の言葉を続けた。


「俺たち部活が終って着替えてる時に、次の試合についての話をよくするんです。恵一先輩と由祐先輩、どちらが1位を取るかって」


それはごく普通の会話だった。


部活をして試合があれば、誰でもするような会話だった。


特に試合が近づいてくるとその1位を取るのが誰なのか気になって当然だった。


「その時、もしも恵一先輩が遅刻してきたりすれば、吉之先輩がトップになるかもしれないって、言いました」


一輝は吉之から視線を外して言った。


その声は恐れをなしていて、少し震えていた。


今まで忘れていたくらい些細な会話。


しかし、奇しくも同じ出来事が起こってしまったのだ。
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