夢の中の世界
そして、後輩から見ても恵一と吉之の実力は一目瞭然だったということだ。


しかし、それを聞いても吉之は動揺を見せなかった。


自分の実力は自分が一番よく理解している。


そう言いたげな表情で真っ直ぐに1年生を見つめていた。


「今は俺の方が弱いけど、いつかは追い抜いてみせるよ」


そう言って恵一へ笑いかけている。


「今はそういう話じゃないだろ」


恵一は少し笑顔を浮かべて、そう言った。


「それで、2人とも恵一が遅刻するように実行に移したの?」


真弥の、衣着せぬ言葉に1年生2人は同時に首を振った。


「そんなことはしてません!」


今までで分かっていることを照らし合わせてみても、1年生の2人が犯人じゃないことはわかっていることだった。


少し空気が緩んだことで、真弥はわざと言ってみせたのだろう。
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