夢の中の世界
「じゃあ、キックボクシングの更衣室付近にいたことは?」


そう聞いたのは吉之だった。


吉之からの問いかけに、恵里果はビクリと肩を跳ねさせた。


徐々に顔色が悪くなって行き、今にも倒れてしまいそうになっている。


「俺たちの会話を聞いていたのは、恵里果先輩ですね?」


一輝に言われ、恵里果は下唇を噛んで俯いた。


完全な肯定だった。


「偶然話を聞いちゃっただけなら、何の問題もないじゃん。ね?」


あたしは恵里果の腕を掴んでそう言った。


けれど……恵里果はあたしの腕を振り払ったのだ。


そして鋭い眼光でねめつける。


あたしは小さく悲鳴を上げて恵里果から数歩離れた。


こんな恐ろしい顔をしている恵里果を始めて見た。


ゾクリと背筋が寒くなるのを感じる。


「なにがあったのか、ちゃんと話してくれ」


吉之にそう言われ、恵里果がゆっくりと顔を上げた。


その顔はもう青ざめてはいなかった。
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