夢の中の世界
恵里果は一体なにを言っているんだろう?


あたしが原因で事故を起こしたと言いたいんだろうか?


どうして?


聞きたいことは山ほどあるのに、喉の奥に張り付いて出てこなかった。


全身から体温が奪われて行くような感覚がして、とても寒い。


あたしは両手で自分の体を抱きしめた。


そうすることで、これから恵里果が語ることから自分を守れるとでもいうように。


「そうだよ! あんたが男に良い顔ばっかりしてるからじゃん!」


恵里果の言葉には身に覚えがなかった。


あたしは誰彼問わず親しくしたりもしていない。


「なんのことかわからないよ……」


そう言う自分の声がひどく震えていた。


なにがどうなっているのか、理解に苦しむ。


その時だった……「珠のせいじゃない」吉之が言った。


「え?」


どうして吉之があたしを庇うんだろう?
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