夢の中の世界
その疑問を解消する暇もなく、吉之は学生服のポケットから学生証を取り出し、貴央に近づいて行った。


「貴央がカラーボールを渡した相手は、この男で間違いないか?」


学生証の中には誰かの写真が入れられているようだけど、ここからじゃ確認できなかった。


「あ、あぁ。この人で間違いないよ!」


貴央が大きく頷いた時、また時計の針が進んだ。


「それなら、歩道橋からカラーボールを投げ落としたのは俺の父親で間違いないと。理由は、俺を大会で勝たせるためだ」


吉之がそう言うと同時にあたしたちへ向けて深く頭を下げて来た。


「本当に、申し訳なかった!!」


大きな声で言い、そのまま床に膝をついた。


頭を床にこすりつけ、必死で謝罪を繰り返す。


「やめてよ吉之!」


恵里果が止めようとするが、吉之が恵里果の体を突き飛ばしていた。
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