夢の中の世界
「この空間ができあがったのは、全部俺のせいだったんだ!」


「吉之……」


あたしは呟き、視線を逸らせる。


みんなの前で土下座をしている吉之を見ていられなかった。


吉之本人はなにもしていないのに、こんなことをする必要はない。


しかし、そう言っても吉之は土下座をやめないだろう。


ここで止めに入れば、吉之は余計に苦しむことになる。


「事故の原因がわかったなら、もうそれでいいじゃないか」


そう言ったのは恵一だった。


「ここにいる全員が事故に関係していて、それぞれがやってしまった罪もわかった。幸いにも俺と、運転していた父親は無傷だったし、珠もこうして元気になったんだ。許してやれるよな?」


恵一に言われて、あたしはすぐに頷いた。


正直、あたしはまだ事故の記憶を取り戻していない。


それでもみんなが懸命に事故の詳細を探ろうとしてくれている。


その気持ちだけで、嬉しかった。
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