夢の中の世界
全員の視線があたしへ向けられているのがわかった。


時計の秒針だけが空しく空回り、時間は止まったまま動かない。


あたしは視線に耐えきれず、近くに椅子にストンッと座り込んでいた。


「珠は被害者だろ」


恵一があたしを庇うように言ってくれた。


その通りだと言いたかった。


あたしは被害者だからなにも知らない。


早くここから出たいと泣きたかった。


でも……次はあたしの番で間違いなさそうだった。


ここまで1人1人が自分のやってしまったことをちゃんと説明してくれたのだから。


「ちょっと待って……今……思い出すから……」


自分の手が小刻みに震え始めるのがわかった。
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