夢の中の世界
「あの日の朝、珠はなにしてた?」


恵一の質問に、あたしの脳裏には朝の風景が蘇ってきていた。


「あの日はなんの予定もなくて、ゆっくりと起きだしたの。その時に、恵里果から遊びに行こうって連絡が入った」


それはなんでもない日常の一幕だった。


朝、友人から遊びの連絡が入って来ることなんて珍しくない。


「あたしはすぐに行くって返事をした。待ち合わせ場所はコンビニだった」


学校の近くのコンビニだ。


そこまで思い出した時、違和感が胸につっかえた。


そう言えば当日もなんだか妙な感じがしたんだっけ。


その違和感がなんなのか思い出すために、あたしはこめかみに手を当てた。


「なんだか変だなって思ったの」


「変?」


「うん……。そうだ! いつもの約束場所と違ったからだ!」


口に出してしまった瞬間、胸の違和感がスッと外れていくのを感じた。
< 131 / 145 >

この作品をシェア

pagetop