夢の中の世界
「だって……! いつだって珠ばっかりが好かれてる!」


子供のようにしゃくり上げて泣き始める恵里果にあたしはかける言葉を見つけることができなかった。


自分だけが好かれているなんて、そんなつもりはなかった。


だけど恵里果から見れば、あたしはいろんな人から愛情を受けているように感じられたのだろう。


「あたしは引き立て役ばっかり!! 吉之まで、珠のことを……!!」


恵里果の悲鳴には強い憎しみが籠っていた。


あたしはハッと息を飲んで吉之へ視線を向ける。


吉之は立ち尽くしたまま、恵里果を見つめていた。


恵里果がそんな風に感じているなんて考えたこともなかった。


あたしと一緒にいることで、恵里果は劣等感を抱えてきたのだろう。


それなのに、あたしはなにも気が付かなかった!


気が付けば、あたしの視界は滲んで大粒の涙が流れ出していた。
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