夢の中の世界
恵里果のことは親友だった。


高校の中で1番の親友だと言ってもいいくらい、大好きだった。


それなのに……。


「ご……めん、恵里果……」


あたしはその場にしゃがみ込んで恵里果に手を伸ばす。


しかし、その手は振り払われてしまった。


「触らないで!」


と叫ぶ恵里果に、あたしの胸は押しつぶされてしまいそうだ。


「たったそれだけのことで、珠を事故に遭わせたのかよ」


そう言ったのは吉之だった。


だけど、それは吉之が絶対に言ってはいけない言葉だった。


「あたしは……ずっと吉之のことが好きだった! それなのに吉之はずっと珠のことばかり見てるから!!」


あたしは涙をぬぐい、吉之を見上げた。


吉之は気まずそうに視線を逸らせている。
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