夢の中の世界
「珠!?」


目を開けているあたしを見て、お母さんは勢いよく立ち上がってあたしの体を抱きしめた。


「良かった! 本当に良かった!」


何度も良かったと繰り返し、ナースコールを押す。


その後は担当医が病室に来て色々な質問をされ、聴診器を当てられ、なんだか慌ただしい時間が過ぎて行った。


そうこうしている間にあたしの体も随分しっかりと目が覚めて来て、上半身を起こせるようになっていた。


「何か、食べたい物や飲みたい物はある?」


お母さんにそう聞かれたので、あたしは冷たい紅茶を頼んだ。


お母さんは娘にたのまれ事をされたのが嬉しいようで、財布を持ってすぐに病室を出て行った。
< 139 / 145 >

この作品をシェア

pagetop