夢の中の世界
ハッと息を飲んで音がした方を振り返ってみると、時計の長針が5分のところに移動しているのがわかった。


「時間が進んだ……?」


C組の吉之が眉を寄せて呟く。


「でも今、一気に5分のところに行きましたよね?」


1年生の一輝が怯えながら言う。


「壊れてるだけだろ」


もう1人の1年生、由祐がそう返事をして、椅子を持って時計に近づいた。


上履のまま椅子の上に乗り、時計に手をかける。


「あれ、外れないな……」


両手を伸ばして時計を外そうとしているが、なかなか外れないようだ。


「時計のことなんてどうでもいいよ。早くここから出して!」


「真弥、落ち着けって」


真弥が悲鳴のような声を上げて、貴央がなだめている。


真弥の目にはいまもまだ涙が滲んでいて、興奮状態にあるためか頬が赤く染まっている。


このままだと、いつ誰が発狂しはじめてもおかしくなかった。
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