夢の中の世界
確かに誰も言っていない。


だけど、みんなの視線が、場の雰囲気が、あたしが犯人だと言っている。


「こんな空間を珠1人で作れるわけがないもんな。犯人が誰かっていうことよりも、珠の話をしていたことと、時間が進んだことの関係性の方が大切だ」


恵一が早口に言ってくれたおかげで、周りの雰囲気が少し和らいだ気がした。


あたしは大きく息を吸い込み、そして吐き出した。


まるで長い間呼吸を止めていたような感覚がする。


「それなら簡単に試してみることができるじゃないですか。珠先輩の話題をもっと沢山してみるんです。それで時間が進めば確定ってことで」


1年生の一輝が言う。


その通りかもしれないが、自分としては良い気分じゃなかった。


それだと結局、この空間とあたしの存在が密接に関係していることになってしまう。


つまり……この空間を作りあげた、犯人……。
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