夢の中の世界
☆☆☆

それからあたしたちは全員で大声を上げて先生を呼んだ。


「誰かいませんか!? 助けてください!」


「ドアも窓も開かないの! 先生いますか!?」


「誰か助けて!」


それぞれの声が教室内にこだまする。


叫ぶたびに酸素が薄くなって、頭がクラクラしそうだった。


しかし、外に人の気配は感じられない。


窓から見える景色の中には、未だに人っ子一人見当たらない状態が続いていた。


「俺と一輝は床を剥いでみます」


1年生の由祐がそう言い、工具のノミとハンマーを見せて来た。


選択授業の工芸で使っている道具だ。


「そんなの、あったんだ」


あたしは驚いてそう聞いた。


「はい。工芸を選択している人のロッカーに残っていました」


これはラッキーだった。


机の中がカラッポになっていたけれどロッカーの中は残っていたのは、やはり意味があったのだ。


でも、そうなるとこの隔離空間は誰かが意図的に作り出し、脱出するのを見ている可能性が出て来る。


あたしたちはエンターテイメントのコマに選ばれたのだ。


そう考えて下唇を噛みしめた。


誰がどうして作りあげた世界なのかわからないが、誰も傷つけず絶対に脱出してみせる!


それから1年生2人は床板にノミを当てて破壊し始めた。
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