夢の中の世界
犯人たちも、さすがに床を剥がされるなんて考えていないだろう。


きっと、ここに出口があるはずだ。


気が付けばあたしたちはみんなロッカーから工具を取り出し、床を剥がし始めていた。


すでに体力も随分消耗しているけれど、出られるかもしれないという期待が大きく、体が突き動かされる。


それから5分ほど経過した時だった。


バリッ! と音がして床の一部が剝がれたのだ。


床を剥がした由祐の表情が、一瞬にしてパッと輝くのを見た。


「やった! これで出られるぞ!」


貴央が喜びに声を上げる。


しかし、由祐の笑顔がまるでさざなみのように静かにゆっくり、だけど確実に暗くなっていくのを見た。


「どうしたの?」


あたしは額に流れた汗を手の甲で拭い、由祐に近づいた。


「これ……」


由祐はそう言ったきり黙り込んでしまった。


その場から動こうともしない。


「なに?」


そう訊ねながら剝がれた床を覗き込んだ瞬間、絶句していた。
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