夢の中の世界
「由祐、工具を使って砕くんだ!」


あたしたちの後ろから恵一の声が飛ぶ。


絶望に体を震わせて由祐が工具を握り直した。


「はい」


短く返事をして、黒い岩のようなものにノミを押し当て、ハンマーで叩く。


それはカーンカーン! と甲高い音を響かせ、鼓膜を不愉快に揺らした。


「これ、ただの岩じゃない……」


どれだけノミで打ちつけても岩は少しも欠けることがなかった。


普通なら少しずつでも削れていくはずなのに……。


続けてノミを打ちつけていた由祐が「あっ!」と声をあげて手を止めた。


見るとノミの先が欠けているのだ。


「嘘でしょ、工具が壊れるなんて!」


「これ、一体なんなんでしょうか……」


由祐は頬に流れた汗をぬぐい、大きく深呼吸をした。


「こっちの床も剥いでみたけど……」


そんな声がして振り向くと、貴央が青ざめた顔で立ち尽くしていた。


すぐに床下を確認しに行くと、こちらにも同じ岩のようなものが立ちふさがっていたのだ。
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