夢の中の世界
一輝は恵里果のことを怨んでいるかのように、睨み付けていた。


「そうだね。だけど、珠は知らなかったと思うよ?」


恵里果があたしを見て言う。


あたしは素直に頷くしかなかった。


あたしは自分が事故に遭った時の記憶も、持っていないのだから犯人が誰かなんて知るよしもない。


「……本当なの?」


あたしは恵一へ向けてそう聞いた。


恵一は苦し気なうめき声をひとつあげ「本当のことだ」と、呟くように答えた。


同時にあたしから視線を逸らし、右手で自分の顔を覆ってしまった。


「そうなんだ……」


正直ショックだった。


まさか、自分の事故がクラスメートの父親によって引き起こされたものだったなんて、微塵にも考えていなかった。


でも……ふと、違和感が胸をついていた。


「それならここに閉じ込められるのは恵一のお父さんの方がふさわしいと思わない?」


あたしは自分の考えをそのまま口に出していた。
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