夢の中の世界
一瞬にして全員の視線がこちらへ向かう。


だけど、あたしは間違えたことは言っていないはずだ。


「この空間があたしの事故に関することで出来上がったなら、犯人である恵一のお父さんがいるべきでしょう?」


一番の当事者である人がいないのは、さすがに不自然だ。


「それはそうかもしれないけど……」


恵里果はそう言いながらこちらを睨み付けて来た。


咄嗟にあたしは口をつぐむ。


さっきまであたしの味方をしてくれていたハズなのに、どうしたんだろう?


急な不安が胸に湧き上がってくるのを感じた。


しかし、次に見た時には恵里果はいつもの表情に戻っていた。


あたしの勘違いだったのかな……?


そう思った時だった、恵一が口を開いていた。


「俺はあの時、お父さんの車に乗ってた。キックボクシングの試合に行く途中だったから……」


恵一が小さな声で言った。
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