夢の中の世界
「どんな話の時に時間が動いたか、ちゃんと書いていった方がいいかも」


あたしは早口に言って黒板の前に立った。


2つの会話の内容を簡潔に黒板に書きだしていく。


こんなことをして本当に意味があるのかどうかわからない。


でも、やってみなければなにも変われないことは、確かだった。


「事故に関する話題でも、あまり関係が無かったり重要じゃなかったら時間は進まないのかもしれないですね」


1年生の由祐があたしの隣に立ってそう言った。


「そうなのかも……でも、どうしてだろう? 事故を起こした犯人は恵一のお父さんだってわかってるんだよね? なのに、なんでこんな空間ができたんだろう?」


あたしはブツブツと呟いて頭を抱える。


例えば犯人が捕まっていないことが原因で、あたしの苦しみや悲しみがこの空間を作り出したとか。


あたしが死んでしまっていて、犯人への強い怨念が原因でこの空間を作り出したとかなら、まだ理解できる。


でも、今はその両方ともに当てはまらなかった。


あたしはこうして生きているし、犯人はすでにわかっている。


この妙な空間が作りだされる原因が見当たらないのだ。
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