夢の中の世界
カラーボールを強盗などの犯人に投げれば、衣類にベッタリと色がつくのだ。


そうすることで、犯人が捕まりやすくなるし、その場で逃げ出すこともある。


「それって、コンビニとかにある防犯用のボールのことであってる?」


あたしは首を傾げて聞き返す。


「そう。フロントガラスにカラーボールが当たって、視界がゼロになって、次の瞬間事故が起こった。恐らく、カラーボールは車の頭上から投げられたんだろうって言われてる」


恵一の説明にあたしは眉を寄せた。


普通に生活していたそんなことが起こるとは思えない。


どう考えても、誰かが意図的にカラーボールを車のフロントガラスへ投げつけたのだろう。


「頭上からってことは、高いビルの上からってことですか?」


1年生の一輝が聞くと、恵一は左右に首を振った。


「いや。ちょうど歩道橋があったんだ。たぶん、そこから投げ落とされた」


そう言う恵一の顔はまた青ざめ始めていた。


当時のことをリアルに思い出したのかもしれない。


「それって……もしかして、誰かが故意に事故を起こさせようとしたってこと?」


あたしは恐る恐るそう質問をした。


「そうなのかもしれない」


恵一は返事をしてすぐに俯いてしまった。
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