夢の中の世界
だから、恵一はずっと顔色が悪かったみたいだ。


カラーボールを投げた犯人に狙われたのは恵一と、恵一のお父さんだった。


そこにあたしが巻き込まれてしまったのだ。


「でも、どうして恵一が狙われたの?」


そう聞くと、恵一は左右に首を振った。


「なにも身に覚えがないんだ。そりゃあ、少しは誰かに恨まれたりしていたかもしれないけど、あんな、命にかかわるようなことをされるなんて……」


「恵一のお父さんは?」


続けてそう聞いても、恵一はやはり左右に首を振った。


「俺の親父はいい人だ。あの日だって、俺を会場に送ってくれていたんだから」


「でも、外の顔はわからないだろ」


黙って聞いていた貴央が不意にそう言った。


「え?」


恵一が目を丸くして貴央を見つめる。


「別に、恵一の親父さんのこと知ってるってわけじゃないけど、自分の親のことなんて、ほとんどわからないもんだろ? 家にいるときの顔しか、俺たちは知らない」


「確かに、貴央の意見も正しいと思う」


恵里果が頷いて言った。


狙われたのは、恵一のお父さんだったのか……?
< 71 / 145 >

この作品をシェア

pagetop