夢の中の世界
「嘘なの! 本当はあの日、あたしは午前中だけバイト先のコンビニに居た!」


真弥が叫んだ瞬間、カチッ!と音がして長針が動いき、25分で停止した。


全員が息を飲んで真弥を見つめる。


貴央が大きなため息を吐きだし、両手で顔を覆っていた。


たしか、真弥と貴央は1日デートをしていたと言っていたはずだ。


でも本当は違った。


真弥は午前中、コンビニでアルバイトをしていたのだ。


たったそれだけの真実で、時計の針は進んだ。


「どうしてそんな嘘をついたの?」


あたしは眉を寄せてそう聞いた。


貴央はもう、あたしの邪魔をしてこない。


観念したようだ。


「それは……」


そこまで言って真弥は言葉を止めた。


チラリと貴央を見上げている。


ここからでは貴央の表情は確認できなかった。


「あの日、あたしは……」


そこまで言い、真弥は口を閉じてしまった。
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