夢の中の世界
「そのオッサンって誰だよ」


恵一が声を震わせながら聞いた。


少しずつ、事故の真相に近づいている手ごたえを感じる。


その分、真実を知りたくないと思う恐怖心も湧き上がってきていた。


「知らないオッサンだった。土曜日にカラーボールを渡した時も、予め時間と場所を決めておいたから連絡先の交換はしなかったし、お互い名前も聞いてない」


貴央が弁解をするように早口になった。


「本当だろうな!? また嘘をついてたらお前――!」


恵一が右手で拳を握りしめる。


「貴央はもう嘘はついてないよ!」


真弥が叫んだと同時に、時間が5分進んだ。


長針が30分の所で止まる。


それを見た恵一はゆるゆると息を吐きだして、手の力を緩めた。
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