夢の中の世界
力が抜けた貴央はその場にしゃがみ込み、真弥がその体を抱きしめた。


真弥は鼻水をすすり上げて「ごめんね珠、嘘ついてて……」とあたしを見上げてきた。


まだ泣いているが、その表情はどこか清々しさも兼ね備えている。


貴央のやったことをに気がついてから、きっと、ずっと誰かに言いたくて言えなかったのだろう。


今ようやくその呪縛から解放されたのだ。


「あたしに謝っても困るよ。狙われたのは恵一なんだから」


真弥からの謝罪に、キツイ口調で返事をする。


ただのお小遣い稼ぎが、人の命を危機にさらしたのだ。


いくら知らなかったとはいえ、その事実は変わらない。


「ごめんね恵一。あたしたち、本当になにも知らなくて」


真弥の言葉に恵一は返事をしなかった。


直接的に事故に関係していなくても、貴央と真弥の2人が密接に関係していたことがショックだったのだろう。


「カラーボールを渡したオッサンはどんな感じだった?」


恵一は貴央へ向けて聞いた。


「さっきも言ったけど、知らないオッサンだ。本当なんだ!」
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