夢の中の世界
「違うよ貴央。恵一が聞いてるのは相手の容姿だよ」


あたしは横からそう言った。


誰だかわからなくても、見た目を覚えていれば特定できる可能性はある。


「あぁ……。50代くらいに見えた。筋肉質で、トレーニングとかしてそうな感じだった」


貴央の言葉に恵一は考え込んだ。


自分の知り合いに当てはまる人物がいないか、思い出してるようだ。


あたしも、自分の記憶をフル動員して考える。


しかし、筋肉質な男性なんてあたしの知り合いには1人もいなかった。


「俺はオッサンに恨まれるような事なんてしてない!」


途端に恵一がそう怒鳴り、椅子を蹴り上げていた。


「恵一大丈夫か?」


近くにいた吉之が心配そうに声をかけている。


「くそっ! なんで、俺が……!」


冷静に分析していたように見えるけれど、恵一もまた恐怖と大きなストレスを抱えてこの教室にいたのだ。
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