青い春と出会った恋

弓道の練習場は知っている。

学校見学に来た時に案内してもらい、見学までさせてもらった。


ーー練習場に着いたものの、なんとかく入るのに勇気が入ってわたしは廊下でうろうろしていた。

他に新入生で弓道部に入って行く子がいれば、その子に紛れて行けるんだけど…。

そう思って様子を伺っているものの、なかなかその機会は訪れない。
仕方ない。入るか。

そう決意し、扉に手をかけた。


その時、ガラガラとわたしが力を加えていないにも関わらず扉が開いた。


「わっ」

驚いて後ずさりをした。

「おーびっくりした。ごめんごめん、もしかして体験希望者?」

わたしの目の前に立っていた背の高い人が、優しい口調で話しかけた。

「あ、はい」

あ、もしかしてこの人…

見学させてもらった時の記憶を呼び覚ました。
多分、向こうはわたしの事なんて覚えていないだろうけど、わたしは覚えている。

綺麗に矢を射る人だな、とその時思った。

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