隠し事
整った顔だちを近づけられたことや、初めて人からかけられた優しい言葉に、美風は驚いてしまった。

「い、いえ……。あまり人と話せなくて……」

美風がそううつむきながら言うと、「なぁんだ!そんなことか!」と明るい声で凪斗の声が返ってくる。美風がもう一度顔を上げると、そこにはみんなに向ける爽やかな笑顔があった。

「……ッ」

時が、止まったような気がした。美風に向けられる顔は、ほとんどが汚物を見るようなものやかわいそうにと言いたげなものだった。心からの笑顔を向けられたのは、何年ぶりだろう。

「まずは敬語をやめようよ!それから、色々なことを教えて?誕生日とか、血液型とか、趣味とかさ!」

笑顔を何度も向けられ、美風は戸惑いながら凪斗の質問に答える。美風が答えると、凪斗も答えてくれた。

「へえ〜!誕生日は三月一日なんだ。俺は十二月二十日!」

「血液型はAか〜……。俺はO!」

「趣味ないの?じゃあ、今度カラオケとかどう?歌うのってスッキリしていいよ!!」
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