隠し事
周りにどんな目で見られても、凪斗は美風と話すことをやめなかった。そして、それからも一日のどこかで必ず美風に声をかけてくれた。それが不思議で、美風はある日訊ねたことがある。

「どうして、私なんかに優しくしてくれるの？」

すると、凪斗は不思議そうな顔をした。逆にどうしてそんなことを訊くの？と首を傾げられる。

「俺は、色んな人と関わって成長したいんだ。その人の世界を知ることで、自分の知らないことを知れたり、新しいものが見えたりする。だから俺は、色んな世界を知りたいし見てみたいんだ。一ノ瀬さんのことを、もっと知りたい！」

そうして眩しいくらいの笑顔を向けられた刹那、美風の胸に不思議な温かい感情が流れていく。それが何か、最初は理解できなかった。ただ胸が締め付けられ、甘く苦しくなっていく。

そして、それが「恋」だと知るのは簡単なことだった。



そして、出会いから時は少し流れた。美風と凪斗は今日、卒業する。

凪斗は北海道の大学へ行く。美風に唯一優しくしてくれた人とは遠く離れてしまう。しかし、これでいいと美風は思った。この物語は、悲しい結末で構わない。
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