猫娘とおソバ屋さんで働いています
 私は彩さんにネコミミの女の子を紹介された。
「こちらタマちゃん。あおいちゃんと同じでパートさんよ」
「よ、よろしくお願いします」
 私は頭を下げて挨拶した。
「……よろしくにゃ」
 今一つテンションが低い。
 もしかして第一印象で嫌われたかな?
 でも何かした憶えがないんだけど。
 タマちゃんは一五五センチの私より背が低い。栗色のショートカットが似合う可愛い女の子だ。
 茶色いシャツに紺色のジーパン、それに彩さんや私とお揃いのエプロンをつけている。
 ……気になる。
 私はタマちゃんの頭の上とお尻が気になって仕方なかった。
 高校生のときは駅の売店で販売、大学生のときは出版社の営業部で通販業務のバイトをしたことがある。
 大学卒業後に就職した広告会社は一年と持たずに潰れてしまった。
 その後、職探しに苦労していた私にアパート(浅間ハイツ)の大家さんである京極夏彦(きょうごく・なつひこ)さんがこのお店を紹介してくれたのである。
 社会人一年目の私では人生経験が足りないのもわかっている。
 わかっているけど……。
 職場に猫娘のコスプレをしている人に出会うのはここが初めてだ。
 というかアリなの?
 ネコミミ店員のいる店だなんて聞いていない。
 もし私にもネコミミをつけろとか言われたらどうしよう。
「あっ、そうだ」
 彩さんがポンと手を叩いた。
「人間はあおいちゃんだけだけど心配ないからね」
「はい?」
 我ながら頓狂な声が出た。
 
 
 
< 4 / 21 >

この作品をシェア

pagetop