君のとなり。
そう言うと彼がいきなり
私の頭をくしゃくしゃっと撫で、
それから盛大なため息をついた。

「はぁ~。なんで春瀬は頭いいのに
分かってくれないかな。
使っていいから渡してるんでしょ?」

「そっか。ご、ごめんね。」

「謝んな。」

強い語気に思わず顔をあげる。

鳴海くんは怒っていた。
今までに見たことがないくらい。

「春瀬は何も悪くない。
なんで誰かを傷つけるかもって思うの?
すぐに私『なんか』って言うの?
春瀬をそうさせたのは誰なんだよ。」

鳴海くんは、怒ってくれているんだ。
私のために。私をこんな性格に
変えた人に向けて怒っている。

私はふっと鳴海くん越しに見える
空を見ながらぽつりと呟いた。

「昔話、しようか。」
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